K. Ueda, S. Yanagisawa, J. Yamaguchi, K. Itami
Angew. Chem. Int. Ed. 2010, ASAP. DOI; 10.1002/anie.201005082
チオフェン類のβ位選択的C−Hアリール化反応
我々は既に、芳香環C–H結合の直接アリール化を促進する独自のRh, Ir, Cu, Ni, Pd 触媒を開発することに成功している。さらにこれらの触媒的C–H結合アリール化反応の逐次的集積化によって、テトラアリールチオフェンのプログラム合成法を確立することにも成功した。この研究における鍵は、チオフェン環C–H結合アリール化における極めて高い位置選択性(結合選択性)を3つの触媒を使い分けることによって達成したことにあった。特にメトキシ置換チオフェン類とヨウ化アリールのカップリングがPdCl2/P[OCH(CF3)2]3/Ag2CO3触媒を用いるとチオフェン環のβ位で進行することは特筆すべき発見であった。そこでこれを新たな出発点とし、PdCl2/P[OCH(CF3)2]3/Ag2CO3触媒が有する位置選択性、基質一般性を調査したところ、極めて広範囲のチオフェン誘導体のC–H結合アリール化反応において高いβ位選択性を発現することを見出した。現在のところ、本法はチオフェン類のβ位選択的官能基化を実現する唯一の手法である。