Mari Shibata, Hideto Ito,* Kenichiro Itami*
Chem. Lett. 2017, 46, 1701–1704. DOI: 10.1246/cl.170723.
2017年12月の伊藤嘉彦先生追悼記念号に掲載
今回我々は安定で反応性に乏しいと考えられていたアリールトリメチルシラン類を用いた新規ホモカップリング反応の開発に成功した。檜山カップリングに代表される有機ケイ素化合物を用いたカップリング反応において、ケイ素-炭素結合の切断を行うためには通常ケイ素原子上にアルコキシ基やハロゲン基の導入が必要であり、かつフッ素アニオンなどの活性化剤の添加が必要となるのが一般的であった。一方今回開発した反応では、カチオン性パラジウム錯体とオルトクロラニル存在化で選択的にケイ素ー炭素結合の切断が起こり、対応するビアリールを良好な収率で与える。さまざなな官能基を有するアリールトリメチルシランを用いた反応が可能であり、特にブロモ基などがついたビアリールの合成も可能であった。また、ピナコールボロン酸エステル部位(Bpin)を有するアリールトリメチルシランを基質として用いた場合も、選択的なMe3Si–Ar結合の切断が起こり、ボロン酸部位を損なうことなくビアリール類が合成できる。本反応はトリメチルシリルアレーン類を用いた初めての実用的なホモカップリング反応であり、様々な機能性ビアリール化合物や直交型カップリング反応への応用が期待される。