“Carbon Nanobelts: Brief History and Perspective”
Daiki Imoto, Akiko Yagi and Kenichiro Itami
Precis. Chem. 2023, ASAP. DOI: 10.1021/prechem.3c00083
カーボンナノチューブ(CNT)は、様々な用途で優れた性能を発揮することから現代のナノ材料の中心的存在となっています。近年、カーボンナノリング(CNR)やカーボンナノベルト(CNB)と呼ばれるCNTの部分構造をもつ分子群が、そのユニークな構造と特性、およびCNTを精密に合成するための種分子としての可能性から注目を集めています。CNBの合成は、CNTが発見されるずっと以前から、その構造のユニークさに魅せられた科学者たちによって取り組まれてきました。我々は2017年に、世界初のCNBである(6,6)CNBの合成に成功しました。このマイルストーン以降、様々な合成ルートを通じて多様なタイプのナノベルトが合成され、それによって剛直なベルト構造に由来する光物性、磁性、酸化還元特性が実証されてきました。最近ではCNBの応用も行われており、ホスト-ゲスト錯体の形成、三次元分子への変換、導電性の測定などが報告されています。本論文では、CNBの歴史と今後の展望をまとめました。さらに多様なCNB合成が行われ、積極的に応用されることによって、材料科学における斬新かつ画期的な展開が生み出されると期待しています。