Keigo E. Yamada, Iain A. Stepek, Wataru Matsuoka, Hideto Ito,* Kenichiro Itami*
Angew. Chem. Int. Ed. 2023, in press, e202311770. DOI: 10.1002/anie.202311770.
[概要]
五員環、七員環、八員環などの非六員環骨格を含むナノカーボンは、湾曲した構造、分子同士のユニークな一次元充填構造、磁気、光学、電子伝導特性など、さまざまな興味深い物性を有する。今回、パラジウム触媒を用いた分子内Ar-H/Ar-Brカップリングによる七員環を含む多環芳香族化合物の効率的な合成法を開発した。この方法では、炭化水素だけからなる骨格に加え、ヘテロ原子を導入した七員環含有多環芳香族化合物も効率よく合成できる。また、容易に入手可能なアリールアセチレンおよびビフェニルボロン酸からロジウムおよびパラジウム触媒によるC–H活性化を用いた逐次的な六員環および七員環形成反応により、複雑な七員環含有分子ナノカーボンを得ることができる。DFT計算による詳細な機構解析から、協奏的な金属化-脱プロトン化(CMD)機構による七員環形成が可能であることが示された。本研究で合成された七員環含有分子ナノカーボンは構造的にも機能的にも魅力的な分子であり、実際、七員環に起因した非平面構造によって大きく折れ曲がった構造をとっており、一般的な平面ナノカーボンより遥かに有機溶媒に溶けやすく、また凝集有機発光(AIE)を示すなど興味深い性質を示した。