Kenichiro Itami
分子触媒によるフラーレンの官能基化反応
本論文は、我々が2006年より行ってきた「分子触媒化学のエッセンスと取り入れた新しいフラーレン変換化学」について概説したものである。この取り組みによって、(1) フラーレンに対する有機ホウ素化合物の付加反応、(2) ヒドロフラーレン類のC–Hアリル化反応およびC–Hアリール化反応、(3) アルキニル(ヒドロ)フラーレンのC–H/C–C結合切断反応、(4) フラーレンの位置選択的テトラアリル化反応、(5) アジリジノフラーレンの二重求核置換反応、(6) アジリジノフラーレンとアルキンの[2+2]付加環化反応、などの新反応を開発することに成功した。本研究は、フラーレンの変換化学における分子触媒の潜在的可能性を明らかにするのみならず、従来法とは一線を画した新戦略をナノカーボンの合成化学に提供するものである。