Hiroki Kondo, Kenichiro Itami, Junichiro Yamaguchi
Chem Sci. 2017, Advance Article. DOI: 10.1039/C7SC00071E【detail】
アルケンやアルキン、ケトンなどの触媒的ヒドロシリル化反応は数多く報告されているが、シクロプロパンは限られている。特に、一置換シクロプロパンは、ロジウム触媒を用いたシクロプロパンの開裂反応、続く生じたオレフィンに対するヒドロシリル化反応という段階的なものに限られている。本論文では、アミノシクロプロパンの直截的なヒドロシリル化反応を見出した。ロジウム触媒存在下、アシル化アミノシクロプロパンとヒドロシランを反応させると、シクロプロパン環のproximal結合の選択的開裂を伴ったヒドロシリル化体を与える。基質のアシル基の配向作用によりproximal結合が選択的に活性化されたと示唆される。また、用いるモノホスフィン配位子によりシリル基が付加する位置選択性を制御することに成功した。すなわち、PCy3を用いるとシリル基が末端炭素に結合した直鎖体が、tri-1-naphthylphosphine [P(1-nap)3]を用いるとアミノ基のa位にシリル基をもつ分岐体が得られる。本反応はα-アミノシラン類の新たな合成法であり、シランジオール前駆体の合成が可能である。
反応機構解明研究により、本反応はシクロプロパンのC–C結合開裂により、対応するオレフィン(アリルアミン誘導体とエナミド誘導体)が生成した後、ヒドロシリル化が進行することが示唆された。位置選択性はモノホスフィン配位子の円錐角に関係があり、大きな円錐角を有する配位子は直鎖体、比較的小さな円錐角の配位子は分岐体を与えることが明らかとなった。
卒業間際に論文がアクセプトされた近藤寛起博士。立派な仕事を成し遂げて博士号を取得し、化学系企業へと巣立ちました!今後の活躍にご期待ください。