Eri Ito, Tomohiro Fukushima, Takahiro Kawakami, Kei Murakami,* Kenichiro Itami*
芳香族分子にアミノ基が置換した「芳香族アミン」は、医薬品や有機分子材料などの機能分子群に幅広く見られる重要な分子骨格です。この分子骨格をいかに効率的に合成するかが、現代有機化学の重要課題であり、精力的に研究が行われてきました。今回我々が開発した手法では、光触媒を用いることで、市販の芳香環の炭素–水素(C–H)結合を直接的に炭素–窒素(C–N)結合に変換し、一段階で芳香族アミンを合成することができるようになりました。導入できる官能基としては、イミド基に限られていますが、望むアミノ基に誘導可能であり、実用的なアミノ基等価体であるといえます。さらに、本手法の確立により、これまで合成困難であった様々な芳香族イミド分子にアクセスが可能であり、未知の生物活性分子の創生が期待されます。適用範囲は広く、ナフタレンを含む多環芳香族炭化水素にくわえて、チオフェンやオキサゾールのような五員環ヘテロ芳香環に対しても、効率的にイミド基を導入することができます。また導入するイミド基についても、多種多様なものを用いることができます。