Jerome Canivet, Junichiro Yamaguchi, Ikuya Ban, and Kenichiro Itami Org. Lett. 2009, 11, 1733
DOI: 10.1021/ol9001587
近年、芳香環C–H結合のアリール化反応が理想的なビアリール骨格構築法の一つとして大きな注目を集めており、我々の研究グループを含めて世界中で精力的な研究が行われている。これまでPd, Rh, Ru触媒が主に用いられてきたが、より安価かつユビキタスな金属触媒へのシフトが求められている。今回、ヘテロ芳香族化合物とハロゲン化アリールのビアリールカップリングを促進するNi触媒を見出した。例えば、Ni(OAc)2 (10 mol%)、2,2’-bipyridyl (bipy: 10 mol%)、LiOt-Bu (1.5 equiv)のジオキサン溶液に対してベンゾチアゾール (1.5 equiv)とヨードベンゼン(1.0 equiv)を作用させ85 °Cで撹拌すると、ビアリールカップリング生成物(2–フェニルベンゾチアゾール)が高収率(80%)で得られる。このNi(OAc)2/bipy触媒は種々のヨウ化アリールや臭化アリールのカップリングに有効である。ハロゲン化へテロアリールのカップリングも可能である。さらに、チアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾールなどのヘテロ芳香環のアリール化にも有効であることが明らかとなった。興味深いことに配位子をdppfにすると、塩化アリールやアリールトリフラートを用いたカップリングに有効な触媒となることも見出した。機能の宝庫であるヘテロビアリール骨格を極めて安価なNi(OAc)2·4H2O ($126 for 1 kg: Strem Chemicals, Inc.)を触媒前駆体に用いて構築した意義は明白である。