“Statistical verification of anomaly in chirality distribution of carbon nanotubes”
Taishi Nishihara, Akira Takakura, Keisuke Matsui, Kenichiro Itami, Yuhei Miyauchi
Nano Lett. 2022, ASAP. DOI: https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.2c01473
カーボンナノチューブはグラフェンを円筒状に巻いた構造を持つ物質ですが、グラフェンの巻かれた角度(カイラル角)と円筒直径が異なる無数の構造種(カイラリティ)が存在し、ナノチューブの物理特性はカイラリティごとに大きく異なります。したがって、ナノチューブの物理特性を最大限利用するには、完全にカイラリティが揃ったナノチューブを合成する必要があります。その実現に向けて、これまでに、ナノチューブの成長機構の研究が進められ、ナノチューブの成長しやすさと、触媒に接するチューブ端の炭素原子の配置に相関があることが理論的に予測されていました。しかしながら、理論の検証に適した整った条件下で合成されたナノチューブのカイラリティ分布に関する十分な統計データが得られておらず、実験的検証ができていませんでした。本研究では、迅速なカイラリティ決めが可能な広帯域レイリー分光法を開発し、413本のナノチューブのカイラリティ分布を統計的に検証しました。カイラリティ分布をカイラル角の関数として整理し、ランダムな成長を考えた場合と比較すると、カイラル角が約20ºの近辺で、カイラリティ分布の増加率に明確なアノマリー(特異性)があることが明らかとなりました。この結果は、アームチェア型端の配置に依存した成長速度を考えることで、上手く説明できることもわかりました。これらの結果は、将来のカイラリティ完全制御合成実現に向けて、カーボンナノチューブ成長機構に、化学的観点からのより深い理解を与えるものです。