Tsuyoshi Oshima, Iori Yamanaka, Anupriya Kumar, Junichiro Yamaguchi, Taeko Nishiwaki-Ohkawa, Kei Muto, Rika Kawamura, Tsuyoshi Hirota, Kazuhiro Yagita, Stephan Irle, Steve A. Kay, Takashi Yoshimura and Kenichiro Itami,
Angew. Chem., Int. Ed. 2015, Early View. DOI: 10.1002/anie.201502942
触媒で体内時計のリズムを変える
生物時計制御分子KL001は哺乳類の概日リズムの長周期化を促す小分子である(Science 2012, 337, 1094.)。生物時計制御の中核を成す時計タンパク質の一つ、Cryptochrome(CRY)に直接作用する最初の分子であり、副作用の少ない画期的医薬品となることが期待されている。しかしながら、KL001はケミカルスクリーニングによって得られた化合物であり、CRYとの構造活性相関は明らかでなかった。そこで我々は、最新合成技術である炭素水素(C–H)結合直接官能基化反応を中心とした官能基の導入および変換反応を用いて50種類以上の誘導体を合成し、ヒト培養細胞を用いた生物時計への影響評価を行った。
その結果、活性と選択性に関わるKL001の重要構造を明らかにした。さらに当研究室で開発されたC–H直接官能基化反応(Angew. Chem., Int. Ed. 2011, 50, 2387.)を用いて得られた化合物群の中から概日リズムの短周期化を促す新たな分子群を見出した。より詳細な生物評価およびドッキングシミュレーションを実施したところ、これらの分子群もKL001と同様にCRYへの作用を示唆する結果が得られた。すなわち、CRYタンパク質へ作用することで概日リズムの短周期化を促す分子を世界ではじめて見出すことに成功した。
プレスリリース: 触媒で体内時計のリズムを変える〜 ほ乳類の概日リズムの周期を変える新しい分子の発見 〜
メディア掲載: 中日新聞 (2015年5月9日)