Takao Fujikawa , Yasutomo Segawa , and Kenichiro Itami
J. Am. Chem. Soc., 2015, DOI: 10.1021/jacs.5b03118
sp2混成炭素のみから構成される多環芳香族炭化水素は、その縮環様式により多彩な電気的・磁気的性質を発現するだけでなく、ナノカーボンのボトムアップ型合成の出発材料としても注目される有用な有機分子群である。今回我々は、湾曲構造をもつ新たなPAHとして、分子内に2つの共役した[6]ヘリセン構造をもつπ拡張ダブルヘリセンを合成した。本分子はヘリセン構造の不斉に由来した2つのエナンチオマー(ツイスト型)と1つのジアステレオマー(メソ型)をそれぞれ単離可能な安定な異性体としてもつ。これら異性体間の3次元的電子構造の違いに起因した電子的・光学的性質や熱力学的安定性の変化を明らかにした。またツイスト型ダブルヘリセンは固体状態において捻れたラメラスタッキング構造を示したため、通常の平面型多環芳香族炭化水素では見られない等方的な電子的相互作用を示すモデル分子として興味深い。