Hideto Ito, Yukari Mitamura, Yasutomo Segawa and Kenichiro Itami
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 159-163. DOI: 10.1002/anie.201409389
オニオンリング
今回我々はベンゼンとチオフェンが交互に環状に連なったカーボンナノリングであるcyclo-1,4-phenylene-2′,5′-thienylene (CPT)の合成を達成し構造的性質を明らかにした。アルキンL字形シクロヘキサンユニットのGlaser-Hayカップリングによる環状オリゴマー化、ジエンのチオフェン化、シクロヘキサンの芳香族化を経てサイズの異なる3つのCPTの合成を行った。CPTは一般的な環状平面π共役の性質と、cycloparaphenylene (CPP)などの放射状π共役の性質を帯びた新たなcone形π共役を有してることを見出した。実際、CPTはサイズが大きくなるにつれ紫外可視吸収スペクトルにおける吸収波長の長波長シフトがみられるが、蛍光スペクトルにおいては異常な短波長シフトを引き起こした。単結晶X線結晶構造解析において、[4]CPTは全てのチオフェンが同一方向に向いたcone形構造をとっていることがわかり、それゆえか全ての[4]CPT分子も同一方向にconeスッタキングした興味深い結晶構造であることが明らかとなった。