Haruka Omachi, Takuya Nakayama, Eri Takahashi, Yasutomo Segawa, and Kenichiro Itami
Nature Chemistry, 2013, in press. DOI: 10.1038/NCHEM.1655
リングを原料にチューブを精密合成
カーボンナノチューブ(CNT)は炭素のみからなる物質で、様々な応用が期待される次世代炭素材料である。CNTは炭素原子の配列様式によって性質が異なるため、それらの完全な作り分けの手法が強く求められている。これまでに我々はアームチェア型CNTの最短部分骨格であるシクロパラフェニレン(CPP)の選択的合成に成功している。CPPはCNTにおける側面構造と太さの情報を完全にもつ分子であるため、CPPがテンプレートとして働くことで望みの側面構造と太さをもつCNTが合成できると期待される。今回我々は、CPPを出発物質として用いたCNT合成法を開発した。合成したCNTを透過型電子顕微鏡観察やラマン分光法などによって評価したところCPPの太さに近い直径分布が観測されたことから、CPPがテンプレートとして働いていることが強く示唆された。本手法は、テンプレートに用いるカーボンナノリングの大きさを選ぶだけで、リングの直径に対応したCNTを作り分けることができる画期的な手法である。
プレスリリース:カーボンナノチューブの精密合成に成功
有機化学美術館・分館:径の揃ったカーボンナノチューブ合成に成功