Strength of carbon nanotubes depends on their chemical structures
Akira Takakura, Ko Beppu, Taishi Nishihara, Akihito Fukui, Takahiro Kozeki, Takahiro Namazu, Yuhei Miyauchi, Kenichiro Itami
Nature Commun.2019, 10, 3040. DOI: 10.1038/s41467-019-10959-7
今回我々は、カーボンナノチューブの幾何構造が引張強度に及ぼす効果を世界で初めて実験的に実証しました。1本の単層カーボンナノチューブの引張強度測定を実現するために、物理、化学、機械工学といった異なる学問領域のバックグラウンドを持つ専門家の力を結集し、合成、構造決定から引張強度測定までの一連の実験を精密に設計しました。それにより、幾何構造の決まった単層カーボンナノチューブの引張強度の測定に成功しました。最終的に、幾何構造が異なる16本の単層カーボンナノチューブの引張強度の測定を行い、直径が小さく、かつカイラル角が30度に近い「近アームチェア型」と呼ばれる単層カーボンナノチューブの引張強度が最高であることを明らかにしました。炭素-炭素結合の向きと引っ張りの方向が交わる角度と、既存技術で合成した単層カーボンナノチューブにはほぼ必ず存在すると考えられる欠陥の端にかかる力の集中(応力集中)の2つの要因を考慮することで、一見ばらついて見える引張強度をうまく整理できることを見いだし、さらに引張強度を予測する関係式を得ました。これにより単層カーボンナノチューブの引張強度を予測することができるため、今後のナノカーボン材料創製における大きな指針となると期待されます。