Yasutomo Segawa*, Motonobu Kuwayama, Yuh Hijikata, Masako Fushimi, Taishi Nishihara, Jenny Pirillo, Junya Shirasaki, Natsumi Kubota, Kenichiro Itami*
Science 2019, 365, 272-276. DOI: 10.1126/science.aav5021
カテナンや分子ノットといったトポロジカル構造は分子マシンのユニットとして期待される一方で、合成には配位性・極性の置換基が必須であった。今回我々は、ケイ素を用いた新たな合成戦略によって、パラ位でつながったベンゼン環のみからなるカテナンとトレフォイルノットの合成・構造決定・性質解明に成功した。これらの分子を単離したことで、カテナン構造を介した励起エネルギーの速やかな移動、左結び・右結びに由来するトポロジカルキラリティ、トーラス表面を這うようなノットの動的挙動といった興味深い性質を明らかにした。トレフォイルノットは最小のトーラスノットとしてトポロジーの観点からつながりの深い構造であり、今回合成したオールベンゼントレフォイルノットはカーボンナノトーラスの部分構造となることから、本研究は複雑なトポロジーをもつナノカーボンの精密合成に道を拓く成果である。