Takao Fujikawa, Yasutomo Segawa, and Kenichiro Itami
J. Am. Chem. Soc. 2016, ASAP. DOI: 10.1021/jacs.6b01303
近年、非平面構造を有する芳香族分子の化学が著しく発展してきた。本質的に平面構造を好む芳香族分子に非平面性を与えることは、単分子レベルでの多様な電子物性および独特な動的挙動の獲得から、フラーレンやカーボンナノチューブに代表される湾曲した高度縮環π電子系の理解と創製に至るまで幅広い知見を与える。今回我々は、新たな非平面芳香族分子の金字塔になりうる分子として、類を見ない捻れ構造をもつ四重ヘリセンの合成に成功した。四重ヘリセンのサドル型異性体のナフタレン中心は全体で約70°の捻れ角を与え、これはひとつのベンゼン環換算で過去最大となる35°の捻れ角となる。また、サドル型異性体とプロペラ型異性体の電子構造やキロプティカル特性の違い、および計五種類の異性体間の立体化学的関係性とその相互変換経路を詳らかにした。