Kazuma Amaike,Kenichiro Itami, and Junichiro Yamaguchi
多置換ピリジン骨格を構築する新手法、「カップリング反応/環変換反応」の開発及びそれらを鍵反応としたチオペプチド抗生物質GE2270類、アミチアマイシン類の形式全合成を行った。
4-オキサゾールカルボン酸フェニルエステルに対して、当研究室で見出したニッケル触媒による有機ボロン酸と芳香族エステルとのカップリング反応と第一章で述べたニッケル触媒によるアゾールの脱エステル型C–H結合アリール化反応を併せ用い、2,4-ジアリールオキサゾールを合成した。続いて、2,4-ジアリールオキサゾールに対してアリールアクリル酸を作用させると、[4+2]付加環化反応が進行し、脱炭酸、脱水を伴いながら望みの2,3,6-トリアリールピリジンが位置選択的に得られた。様々なジアリールオキサゾールとアリールアクリル酸誘導体とを組み合わせ反応を行い、合計15種類以上の2,3,6-トリアリールピリジンの迅速合成に成功した。
さらに開発したトリアリールピリジン合成を用いて、チオペプチド抗生物質の合成に取り組んだ。まずトリアリールピリジン合成に必要な4-チアゾリルオキサゾールとチアゾールフェニルエステル、チアゾリルアクリル酸をそれぞれ合成した。これらの化合物を開発した多置換ピリジン合成に適用することでチオペプチド抗生物質の共通中間体である、2,3,6-トリチアゾリルピリジンの合成に成功した。得られたトリチアゾリルピリジンから数段階を経て、チオペプチド抗生物質であるGE2270類およびアミチアマイシン類の形式全合成を達成した。