昨年ドイツから留学してたJohannesくんと奥村くん(M2)の「ナノグラフェンの高溶解性スルホニウム化」論文がChemical Science誌に採択されました!
Functionalization and solubilization of polycyclic aromatic compounds by sulfoniumization
Johannes E. Erchinger, Tsubasa Okumura, Kanami Nakata, Daisuke Shimizu, Constanstin G. Daniliuc, Kazuma Amaike,* Frank Glorius, Kenichiro Itami* and Hideto Ito*
Chem. Sci. 2025, accepted. DOI: 10.1039/d5sc01415h
PAHは平面性の高い構造を持ち、分子同士の相互作用が強く、水に不溶で有機溶媒への溶解性も非常に低いため、その化学変換や応用は多くの課題がありました。そのため、PAHを可溶化させながら効率的に変換する手法の開発が望まれています。 本研究では、有機溶媒だけでなく水への溶解性を高める「高溶解性スルホニウム基」の導入手法を新たに開発しました。水、有機溶媒双方との溶媒和能が高いトリエチレングリコール側鎖を持つ高溶解性ジアリールスルホキシドを新たに合成し、酸性条件でPAHとともに反応させることで、PAH-スルホニウム塩が収率よく得られました。PAH-スルホニウム塩の有機溶媒への高い溶解性を活かして、さらなる官能基変換やナノグラフェン合成が容易に行えることが分かりました。また、合成した水溶性ペリレンースルホニウム塩は、動物細胞中のミトコンドリアという細胞小器官を選択的に蛍光標識できることも見出しました。 本研究は広範な多環芳香族化合物を効率的に変換・可溶化する新しい指針となることが予想され、ナノグラフェン合成への応用だけでなく、蛍光標識剤としての利用など幅広い分野・用途での応用展開が期待されます。